ワインは日本の食卓にも時たま並ぶことがある、大衆的な嗜好品として幅広い世代に愛されています。なかでもフランスはワイン消費量、産出量共に世界第2位にワイン大国です。ワインのお供として欠かせないお肉やチーズも大量に消費する国として有名です。
お肉やチーズは飽和脂肪酸(saturated fat)が豊富に含まれているため、過剰な摂取は冠動脈疾患への罹患リスクが高まることが明らかとなっています。
そんなフランスですが、心臓疾患による死亡が少ない!?と言う事実が1992年に打ち上げられました。大量のお肉やチーズを消費するのに心臓病になりにくいなんて・・・なんかカラクリがあるはずだ!
ということで、
本稿を読んでいただければ、
①フレンチパラドックスとは
②フレンチパラドックスのカラクリ
について詳しくなれます。
目次
フレンチパラドックスとは
フランスは肥満大国アメリカと比べ4倍量のバター、60%増しのチーズ、3倍近い量の豚肉を多く食べていると言われています。総脂肪摂取量は大差ないものの、飽和脂肪酸 (saturated fat)摂取量は遙かに多く摂られている計算となります。
しかしながら、心臓疾患の危険因子である飽和脂肪酸の摂取量はフランスが多いものの、実際の心臓疾患で亡くなる人の割合はアメリカの方が多い計算となります。
このことを、フランス、ボルドー大学のセルジュ・ルノー教授が「フレンチパラドックス (French・Paradox)」と呼びました。
その後の研究で、
A high intake of dietary cholesterol and saturated fat but low CHD death rates define the French paradox
Professor Jean Ferrières, BMJ 2005, The French paradox: lessons for other countries
=日常的にコレステロールと飽和脂肪酸摂取量は多いが冠動脈性心疾患で亡くなる割合が低いことをフレンチパラドックスと定義する。
とされました。
赤ワインの持つ強力な抗酸化作用
赤ワインの原料であるブドウには抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富に含まれています。
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赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化能力は血液中のLDLコレステロールの酸化を抑制する働きを日本の研究チームが世界で初めて明らかにしました。そのため、赤ワインの摂取と動脈硬化性疾患には強い関連があると考えられたわけです。
赤ワインに含まれるポリフェノール
赤ワインに含まれる代表的なポリフェノールは以下の通りです。
アントシアニン・・・赤みの成分
タンニン・・・苦みの成分
レスベラトロール・・・生理活性の最も高いポリフェノール
カテキン・・・苦みの成分
植物が外的刺激から身を守るために、自ら生成する自己防衛成分「ポリフェノール」は主に、種皮部分に存在すると言われています。普段、我々が食事として果物や野菜を摂取する際は、皮や種を取り除いて調理されることがしばしばですが、前述したように、ポリフェノールは種皮部分に多く含まれることがあります。
そのため果物を意識して食べるよりも、100%ジュースや赤ワインのように、成分を抽出した形で摂取した方が、ポリフェノールを多く取り入れることが可能という場合も出てきます。もしくは、積極的に皮を取り除かずに調理することも選択肢として持っておくとよいかもしれません。
赤ワインはカラダにいいの?
フレンチパラドックスが示すように、飽和脂肪酸摂取量が多い食習慣を持つフランス人が心臓疾患で亡くなる割合が少ないという事実は、「赤ワイン=健康」という概念を生んでいます。
確かに、赤ワインに含まれるポリフェノールはLDLコレステロールの酸化を抑制することで動脈硬化性疾患を予防する効果が期待できるとされています。
【酒は百薬の長】とは古来から日本に伝わる先人の教えとして有名ですが、アルコールは脳へのダメージ、生活習慣病のリスクを一杯でも与えることが明らかになってきました。
赤ワインも例外ではなく、ポリフェノールが多分に含まれていること以外は、アルコールの引き起こす健康への弊害の側面は拭えないのが現実です。つまり、赤ワインの摂取は、ポリフェノールを摂取する点では有効とされる一方で、アルコールによるダメージも蓄積することから、カラダにいいとは必ずしも言い切れないといえます。
フレンチパラドックスを真っ向から否定!
フレンチパラドックスの真実解明に挑んだアメリカの研究チームが2014年に衝撃的な事実を発表しました。
レスベラトロール・・・赤ワインに多く含まれるポリフェノールであり、強い抗酸化作用があるとされており、ガンや動脈硬化予防に効果がある可能性が示されています。この研究は、レスベラトロールと長寿(ガンや心臓疾患による死亡)との関連について追跡研究を行いました。
尿中に排出されるレスベラトロールを元に、実際に摂取したレスベラトロール量を推定し、摂取量で参加者を曝露し782人の地域在住高齢者(65歳~)を9年間追跡しました。
Point.
●フレンチパラドックスは本当に存在するのか?
赤ワインに多い「レスベラトロール」摂取量で比較してみよう!
↓結果↓
○ガンや、炎症、心臓疾患との関連なし!!
西欧式の食習慣が必ずしもカラダにいいとは言えない結果が示されたことで、現在では、フレンチパラドックスに関して否定的な事実が多く取り上げられています。
地中海式の食事がキーポイント!
フランスの南部、赤ワイン消費量が多い地域で心血管疾患発症が少ない理由を「赤ワイン」で説明がつかなくなってから、さらに調査が進み、実は地中海式の食事が重要な要因となっているのではいかという議論が浮き上がりました。
地中海式食事法は
全粒穀物・野菜・果物・オリーブオイル・乳製品を多く摂る方法です。
地中海式食事法を伝統的に行っている地中海近隣諸国は心血管疾患発症による死亡が他地域と比べ低いことが分かっています。
現在多くの地域で、和食と共に健康的な食事法として取り入れることが推奨されています。
地中海式食事法の肝はオリーブオイル!
地中海式食事法の中心を担う存在が、オリーブオイルです。
オリーブオイルは近年抗炎症作用があることから注目を浴びています。
2017年ギリシャの研究チームが「オリーブオイルの消費量と心血管疾患発症」との関連について約10年間の追跡研究を行いました。
Point.
●オリーブオイルには一不飽和脂肪酸が豊富
●抗炎症作用あり
→心血管疾患発症との関連は?
↓結果↓
○オリーブオイルの消費は心血管疾患発症の予防に効果あり!!
まとめ
○フレンチパラドックスは赤ワインだけの効果ではない
○赤ワインは必ずしもカラダにいいとは言い切れない
○地中海式食事法の推奨