30代辺りから気になり始める方が急増する【コレステロール】について、コレステロールの存在意義と運動効果についてご紹介いたします。
こんな方におすすめ
- コレステロールが異常だといわれた方
- 医師から運動を勧められた方
目次
コレステロールとは【知っておきたい】
そもそもコレステロールとは脂質の仲間です。
脂肪の仲間には中性脂肪(トリグリセリド)、リン脂質、遊離脂肪酸があります。
いずれも、カラダの組織(細胞膜)を覆う成分やとして必須な材料となります。
また、ホルモン(男性ホルモンや女性ホルモン)の原料にもなります。
そのため、過度な食事制限ダイエットによってコレステロールが体内で不足すると、
- 髪や肌のパサつき
- 生理不順などの症状
- 体調の不良
など様々な場面で異常をきたします。
つまり、コレステロールは悪者ではなく
生命維持のためには必要不可欠な器質であるといえます。
リポ蛋白質とは?
通常、コレステロールは単体で血液中を移動することができないためアポ蛋白質と結合しリポ蛋白質となり血液中を輸送されます。
リポ蛋白質は比重や大きさにより分類されます。
サイズが小さいほうから
○カイミクロン
○Very Low Density Lipoprotein (VLDL)
○Low Density Lipoprotein (LDL)
○High Density Lipoprotein (HDL)
と位置づけられ、それぞれ違った役割を持ちます。
中性脂肪(トリグリセリド)
中性脂肪は、エネルギー源である糖質が体内で不足した際にエネルギーの役割を果たす脂質です。体内で余分となったエネルギーは肝臓に運ばれ中性脂肪として血液中に放出され、皮下脂肪となりエネルギーとして利用される機会を待ちますが、エネルギー過多な食生活を行っていると、皮下脂肪として中性脂肪が蓄積され続けるか、または肝臓に入り込み脂肪肝となる可能性を秘めています。
中性脂肪は分解されエネルギー基質である遊離脂肪酸を産生します。つまり、有酸素運動が長時間持続できるのは、中性脂肪が皮下脂肪として蓄えられているから、ということになります。
中性脂肪はカイミクロン、VLDLによって運搬されるコレステロールです。血液内で非常に大きな分子となって移動しています。中性脂肪が増えすぎると血管内でこれらのリポ蛋白質が移動しづらくなるため、血流の阻害が起こる可能性があります。
【こちらもcheck】無酸素運動と有酸素運動の違い【効率的なダイエット】
LDL(悪玉)コレステロール
LDLコレステロールはLDLという運搬屋さんであるLDL(リポ蛋白質)とコレステロールが結合した分子状態のことを言います。
LDLは肝臓で生成されたコレステロールを体の各組織に届ける働きを持ちます。
この”運び屋”としての役割は生命維持に重要な基質を運搬することから必要不可欠な存在であることに違いはないのですが、
なんせ、このLDLは片道切符しか持たず、運搬したら終わりという性格を持ちます。
そのため”悪玉”コレステロールというレッテルを貼られています。
この悪玉コレステロールが血液内で増加すると、サイズは小さいものの比重がとても重いためどろどろの血流を作り出す原因となります。
どろどろの血液内では、血管に詰まりやすく(アテローム)血流を阻害することで循環器疾患や動脈硬化を引き起こす原因となってしまいます。
参考文献
How Cells Handle Cholesterol
Kai Simons and Elina Ikonen. Science 2000;290: 5497:1721-1726
HDL(善玉)コレステロール
HDLコレステロールはHDLというお掃除屋さんとコレステロールが結合している分子の状態を指します。
HDLコレステロールが【善玉コレステロール】と呼ばれる所以は、血管内や肝外の組織から余分なコレステロールを剥ぎ取って肝臓に戻す役割を果たしているからです。イメージとしてはスクラブのように非常に小さくそれでいて重いため血管内で詰まりにくい特徴があると思ってください。
HDLコレステロールは上記2点と違い、なるべく高いほうがよりよいとされています。
参考文献
New Insights Into the Regulation of HDL Metabolism and Reverse Cholesterol Transport
Gary F. Lewis and Daniel J. Rader. Circulation Research. 2005;96:1221–1232
コレステロール異常が引き起こす病気【脂質異常症の恐怖】
コレステロール値を気にしなければならない理由は明確です。
突然死を招くリスクが増大するからです。
他人事ではないのでしっかりチェックしておきましょう。
脂質異常症
コレステロール異常で診断が言い渡される疾患はこれです。
”脂質異常症”。
脂質異常症の診断基準は至って明確です。
- LDL-コレステロール ≧140
- Triglyceride(中性脂肪) ≧150
- HDL-コレステロール <40
上記のいずれかが当てはまった場合、脂質異常症と診断されることが多いです。
さらに、喫煙習慣、年齢、性別等問診によって治療する対象かどうかが判断されます。
脂質異常症が怖い理由
脂質異常症は現在220万人いると推定されており、1980年以降40年間毎年有病者数は増加しています。その背景にあるのが、遺伝的な要因のほか、欧米風の食生活の蔓延、交通手段情報伝達網の発達による身体活動量の低下が大きな要因といわれています。
脂質異常症と診断されても、正直な話、自覚症状はほとんどないと言っても過言ではありません。
つまり、”沈黙の病”といわれ、気がついたときには。。。。。ということを防ぐための一次予防的観点から脂質異常症の改善が必要となります。
脂質異常症を放置しておくと・・・
脂質異常症を放置しておくと、アテローム性動脈硬化が進行する危険性が高まります。
アテローム性動脈硬化(atherosclerosis)は,
出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版
動脈硬化症(arteriosclerosis)の最も一般的な形態であり,
(中略)
冠動脈疾患や脳血管疾患を引き起こすことから,動脈硬化症の中で最も重篤で臨床的に重要な病態でもある。
”沈黙の病”であるがゆえ知らないうちにアテローム性動脈硬化を進行させているなんて怖すぎますね・・・・
2015年には,全世界でおよそ1,500万人(すべての死亡の25%を超える)が
出典: MSDマニュアル プロフェッショナル版
冠動脈および脳血管のアテローム性動脈硬化を主とする心血管疾患(CVD)により死亡した。2014年の米国では,全死亡者のほぼ3分の1に当たる800,000人以上がCVDにより死亡した。
(中略)
アテローム性動脈硬化は現在,世界中で最大の死因となっている。
WHO Global Health Estimates 2000-2015.
Benjamin EJ, Blaha MJ, Chiuve SE, et al: Heart Disease and Stroke Statistics 2017 update: A report From the American Heart Association. Circulation 135:1–459, 2017.
心血管疾患を予防する上で、脂質異常症の発症を予防することは非常に重要な手段の一つであるといえます。
脂質異常症の危険因子
以下の項目に該当する数が多ければ脂質異常症罹患の危険が増大しています。
注意
●油分の摂取が多い(ドレッシング、揚げ物、肉等)
●糖質の摂取が多い(消費エネルギーを遥かに超えている)
●逆に低糖質ダイエットをしたことがある(low carbo-/ high fat)
●顕著な野菜不足【食物繊維不足】
●顕著な運動不足(週1日すらも走らない)
●喫煙(本数に限らず)
●肥満(とりわけ体脂肪率が30%以上)
●女性(とりわけ閉経後)
【食事由来】糖質や脂質の摂取
体内に存在するコレステロールの約60~80%は肝臓で生合成されます。
残りの約20~40%は食事由来のコレステロールになります。
ほとんどの場合、糖質が肝臓でコレステロールに生合成されているといわれています。
余談ですが・・・
これまで卵は1日1個までという迷信が囁かれてきましたが、
2015年日本動脈硬化学会の 『コレステロール摂取量に関する声明 』において以下の内容を報告しました。”2013年秋にアメリカ心臓病関係の学会であるACC/AHA および
2015年2月に米国農務省USDA は
『食事中コレステロールの摂取と血中コレステロールの間に
明らかな関連を示すエビデンスがないことから、
これまで推奨していたコレステロール摂取制限を無くす』
ことをガイドラインに記載しました。日本では
『健常者において食事中コレステロールの摂取量と血中コレステロール値の間の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限は推奨されない』
ことも並べて示されました。つまり、コレステロールの摂取には余り気を配らなくてもいい!?という認識が現在のところの見解です。
しかし、コレステロールは脂質に含まれているため、カロリーは9kcal/gと計算され容易に摂取過多に陥りやすく、肥満の誘発を招く恐れがあります。
肥満自体が心血管疾患の危険因子であるため、結果的にリスクの増大が見込まれます。
出典:日本動脈硬化学会より改変
糖質制限ダイエットの危険性
糖質を抑えればコレステロール値が下がる、なんてワケでもないんです。
そもそもコレステロールは生命維持に必要なため肝臓で生成されます。生命維持の材料を抑制することは、ホメオスタシス(恒常性機能維持)が働き、余分にコレステロールを生成してしまう可能性が出てきます。
2016年に発表された研究を紹介いたします。
低炭水化物摂取と体重、心血管疾患リスク(血清コレステロール値など)の関係をメタ解析した論文です。
11件のランダム化比較試験をまとめ1369人を解析したところ、
体重は顕著な減少を示すものの
LDLコレステロール値が上昇する結果を示しました。
炭水化物を減らすことにより、必然的に食物繊維の減少と炭水化物に含まれる微量栄養素が欠乏したことがLDLコレステロールの上昇の起因となったのかもしれません。
参考文献
Mansoor, N., Vinknes, K., Veierød, M., & Retterstøl, K. (2016). Effects of low-carbohydrate diets v. low-fat diets on body weight and cardiovascular risk factors: A meta-analysis of randomised controlled trials. British Journal of Nutrition, 115(3), 466-479. doi:10.1017/S0007114515004699
Effects of low-carbohydrate diets v. low-fat diets on body weight and cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomised controlled trials
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コレステロールを改善する運動
結局、コレステロールを改善させるためには投薬治療(スタチン)のほかには運動が有効であることは明確です。
代表的な【筋トレ】と【有酸素運動】の効果について紹介いたします。
筋トレ
筋トレに関するコレステロールの値の変化は未だにメタ解析としてまとめられていません、というのはまとめるための本数が足りていない状況です。
しかし、これまで報告されてきた文献を探すと
筋トレにはLDL-C と中性脂肪の減少効果が期待できるようです。
強度に関しては未だ一致した見解がされていませんが、エネルギー消費量は比較的多くなるため、コレステロール(とりわけ中性脂肪)の改善が期待されます。
有酸素運動
12週間以上追跡した研究51本、延べ4700人を解析した結果、
有酸素運動を継続することでHDL-Cの上昇、中性脂肪、LDL-Cの減少が認められました。
具体的には
ニコニコペース(会話ができる程度の速さ)の有酸素運動ではHDL-C の上昇効果が認められています。
しかし、この強度ではLDL-Cの改善は期待できないとされています。
LDL-Cを直接下げるためには、ニコニコペースよりも強い強度での有酸素運動(!?)を持続する必要があると報告されています。
コンバインド(筋トレ+有酸素運動)
コンバインドについても筋トレ同様文献数が少なく、一致した見解が未だにありません。
しかし、上記同様、HDL-Cの上昇とLDL-Cの減少効果は期待できるものと記されています。
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参考文献;
Mann, S., Beedie, C. & Jimenez, A. Sports Med (2014) 44: 211. https://doi.org/10.1007/s40279-013-0110-5
Differential Effects of Aerobic Exercise, Resistance Training and Combined Exercise Modalities on Cholesterol and the Lipid Profile: Review, Synthesis and Recommendations
ソイプロテインの活用も有効な手段
プロテインの活用もコレステロールの調整に役立つことが明らかです。
特に『ソイプロテイン』。
大豆たんぱく質の積極的摂取はアメリカで心臓病の発作リスクを低減させることが可能であると言われています。
プロテインは筋肉をつけるためのものではなく、必要な栄養素、と言う捉え方をしましょう。
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まとめ:脂質異常症と言われたら運動を積極的にすべき
脂質異常症は生活習慣病のひとつとして解決せねばならない喫緊の課題のひとつです。
普段の食生活はもちろん、意識的に運動をしなければ、血液循環は促進されず、血管は詰まりやすくなる一方です。
自分で運動ができなければジムに行くべきです。
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明日は我が身、です。