2010年代前半に一世を風靡した「スロトレ」。
名前は聞いたことあるけど、実際どんなものか分からない・・・。と言う方は多いはず。
特に、このトレーニング方式は、低負荷で筋肥大が期待できるトレーニング方法として確立しています。
それゆえ、筋トレをはじめたばかりで重り(ウェイト)を持つことに不安のある『筋トレ初心者』や体力の衰えを感じ始めた『高齢者』、運動不足を認識している『主婦層』幅広い世代のかたが安心して行えるトレーニングです。
今回は『スロトレ』に焦点を当てていきます。
筆者はこんな人
●【学歴】東京大学大学院 (博士)
●【経歴】中学・高校バスケ部トレーナー
●【経歴】甲子園球児ストレングス指導
●【職業】体育系大学教員
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目次
筋トレ初心者におすすめするスロトレの効果【高齢者でも筋肥大できる!】
スロトレはこれから筋トレ始めたいという筋トレ初心者や、ジムに行く時間がなかなかとれず自宅で筋トレして筋肥大させたい方、さらには、重りを持つことすら不安な高齢者にとっても安心して行えて、筋肉の成長を促せるトレーニングメソッドです。
その方法は単純明快。
以下に説明します。
例:スクワット
① 3秒かけてゆっくりしゃがむ
② 最も低い位置で1秒キープ
③ 3秒かけてゆっくり立つ(この時膝は伸ばし切らない!)
これを1回として10回程度行うだけです。
10回が余裕でできる様であれば、少しの重り(例えばペットボトルに水を入れて持つ)をかけながら行っていきます。
呼吸は止めずに、ゆっくり行うことと共に、フォームを意識しながら行うことが重要です。
とにかくスローで行うことが、このスロトレのミソとなります。
スロトレの効果とは
スロトレの効果を以下に列挙します。
低負荷で筋肥大させることができる
スロトレを開発した谷本先生(筋肉体操でおなじみの)と石井先生(筋肉博士でおなじみの東大教授)による研究では、通常の筋トレ(高重量)とスロー群(50%程)でトレーニングしたところ、筋肥大率に差がないことを報告しています。
通常の筋トレと同じ効果が期待できるスロトレは最強ですね。
体力に自信のない人は自重でも筋力アップ!
同じ研究グループの報告では、自重トレーニングをスロトレで行うことで筋力が向上していることも明らかとなっています。
スロトレの最大の特徴である『低負荷』は筋力が低い人にとっても安心です。
自身の体重でも、ゆっくり行うことで負荷が増すことになります。
低負荷のスロトレは血圧上昇が穏やか
筋トレとイメージすると、血圧が上昇しやすいイメージがあるかと思います。
しかし、ゆっくりと動作を行うことで血圧の上昇の幅は、通常筋トレよりも格段に狭くなることが分かっています。
そのため、スロトレは安全にも配慮できるトレーニング法の1つと言えます。
スロトレは成長ホルモンの分泌を促進する
スロトレは通常の筋トレと同様、成長ホルモンの分泌を促進します。
成長ホルモンは、あらゆる人間の代謝のスイッチとして働くことから、その重要性は、健康業界にとどまらず、美容や教育業界まで注目しています。
たとえば、成長ホルモンの際だった役割として、アンチエイジングが挙げられます。
成長ホルモンは代謝を促進することから
・肌のハリ、ツヤ
・髪のツヤ
・肌のきめ細やかさ
が向上すると言われています。
実際に、美容クリニックでは成長ホルモンの注入が行われているほど、注目を浴びているホルモンです。
スロトレは関節への負担を軽減
スロトレはゆっくり動作を行うことで、関節、特に靱帯へのダメージを抑制してくれます。
筋トレで怪我をする多くの原因が『動作の切り返し』であると言われています。
そのためスロトレによって動作を絶え間なくゆっくり行うことで、動作の切り返しじ懸念される靱帯への負担を減らすとされています。
ゆっくり動作すること(スロトレ)のメカニズム
動作をゆっくり行い狙った部位が弛緩しない状態を作ることは、細胞内を低酸素状態にします。
低酸素状態に陥ることで筋のアナボリック反応が促進すると言われています。
このメカニズムを応用しているのが『加圧トレーニング』です。
加圧トレーニングは意図的に低酸素状態を作り出すことで筋の成長を促進しています。
しかし、その一方で、圧のかけ方は人によって特に注意しなければならないことが多分にあることから、やみくもに行うことは非常に危険です。
スロトレのまとめ:低負荷で筋肥大、筋力アップ
通常の筋トレは過負荷の原理において負荷(重りなど)を追加していくことが需要とされています。
一方、スロトレは一般的に低負荷とされる負荷であっても、とにかくスローで動作することで、筋肉の成長がうながされます。
ゆっくりと動作することは、関節への負担を極限まで減らすこと、血圧の上昇を緩やかにすること等と言った、保険が担保されます。
それでいて、筋肥大や筋力向上の効果が見込めるので、自宅でも、公園でも、職場でもどこでも時間と場所を選ばずに行える、優れたトレーニング方法であると言えます。
参考文献
・中高年のスロトレ 【決定版】 石井直方(監修)
・最短時間で最大効果! 筋力トレーニングの時間短縮プログラム 石井直方(著)
・一生太らない体のつくり方&スロトレ 石井直方(著)
・スロトレ完全版 DVDレッスンつき 石井直方、谷本道哉(著)
・Tanimoto M, Ishii N. Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men. J Appl Physiol (1985). 2006;100(4):1150-1157. doi:10.1152/japplphysiol.00741.2005
・Tanimoto M, Sanada K, Yamamoto K, et al. Effects of whole-body low-intensity resistance training with slow movement and tonic force generation on muscular size and strength in young men. J Strength Cond Res. 2008;22(6):1926-1938. doi:10.1519/JSC.0b013e318185f2b0
・Watanabe Y, Tanimoto M, Ohgane A, Sanada K, Miyachi M, Ishii N. Increased muscle size and strength from slow-movement, low-intensity resistance exercise and tonic force generation. J Aging Phys Act. 2013;21(1):71-84. doi:10.1123/japa.21.1.71
・Watanabe Y, Tanimoto M, Oba N, Sanada K, Miyachi M, Ishii N. Effect of resistance training using bodyweight in the elderly: Comparison of resistance exercise movement between slow and normal speed movement. Geriatr Gerontol Int. 2015;15(12):1270-1277. doi:10.1111/ggi.12427