有酸素運動を続ければ脂肪燃焼(脂肪によるエネルギー産生)が高まって痩せるんでしょ??
って思っていませんか?
「ダイエットに適した有酸素運動は20分以上〜」
みたいなフレーズもしばしば目にします。
確かに、ランニングや自転車、水泳など、長い時間継続できる有酸素運動は脂肪をエネルギー源にして筋肉を動かします。
ただし、これってただ脂肪を使って運動しているから痩せていく、という訳ではないんです。
筆者はこんな人
●【学歴】東京大学大学院 (博士)
●【経歴】中学・高校バスケ部トレーナー
●【経歴】甲子園球児ストレングス指導
●【職業】体育系大学教員
目次
走っても痩せないって本当
走っても走っても痩せない原因は「カロリー計算」のミスです。
カロリー計算をしていない人は、まずしてみましょう。
ダイエットの大原則は「消費カロリー > 摂取カロリー」です。
有酸素運動は「消費カロリー」を高めてくれますが、実際に消費するエネルギーは決して多くありません。
消費エネルギーの計算はMets(メッツ)を使用して行うことが一般的です。
[関連]国立健康栄養研究所改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』
ランニングはおよそ7Metsです。
消費エネルギー=メッツ×運動時間×体重kg×1.05 の公式を用いて、
(体重60kgの人の場合)
1時間のランニングで
=7×1×60×1.05= 441kcal の消費カロリーが計算できます。
30分のランニングだと
=7×0.5×60×1.05= 221kcal となります。
日本人の成人男性(女性)の消費カロリーは2200kcal(2000kcal)程度です。
毎日のランニングで400kcal程度消費できるなら計画的に痩せることは不可能ではないです。
消費カロリーより摂取カロリーを稼ぐ方が簡単
ランニングで得られる消費カロリーは1時間走ってもせいぜい400kcal程度。
400kcalを食事で計算すると、ご飯1.5杯程度。
[関連]タニタ摂取カロリー早見表
1日で考えると、2000kcal以上の食事をしていることは明白です。
そう考えると、
消費カロリーを必死に稼ぐより、スタバに行って甘―い飲み物を飲むだけで1日の推奨摂取カロリーを余裕で超えてしまうわけです。
つまり、有酸素運動はダイエットにおいて、決して効率が良いダイエット方法とは断言できないというのが現状です。
12ヶ月間の有酸素運動で期待できるダイエット効果はわずか
有酸素運動をすることはダイエットの効果は非常に限定的であることがメタ解析から明らかになっています。
体重でおよそ「−2kg」
腹囲でおよそ「−2cm」の変化にとどまっています。
このように、「有酸素運動だけ」によるダイエット効果は非常に限定的で、個人が望んだ結果にならないことの方が一般的です。
有酸素運動はコレステロール/血圧を改善する!
ダイエット効果があまり見込めなかった有酸素運動ですが、コレステロールや血圧といった心血管疾患の発症に関連する因子を大幅に改善する効果があります。
有酸素運動はダイエットの効果があまり期待できないことを示しましたが、けして悲観することはありません。
「肥満」は心血管疾患や糖尿病発症の危険因子と言われていることは皆さんもご存じのはず。
肥満であるだけで健康寿命を奪いかねない事実がそこにはあります。
それに加え、コレステロールや血圧も健康寿命と大きく関連しています。
心血管疾患の発症を予防するためには、危険因子とされる、コレステロールや血圧のコントロールをする必要があります。
有酸素運動にはこういった「生活習慣病」の危険因子となる芽を、改善する効果があります!!
ですので、「有酸素運動にはダイエット効果ないからやらない」、と言う判断は賢明とは言えません。。
持久力向上はダイエットの味方?
持久力とは一般的に糖質をエネルギーとして利用できる能力に左右されます。
言い換えると、糖質をなるべく節約しながらエネルギーを生み出すことができれば、高いエネルギーを運動終盤まで維持できることになります。
糖質を節約しながら運動をする場合、糖質に変わるエネルギー源の主たる因子は「脂肪」です。
ヒトは常に糖質と脂肪をもとにエネルギーを産生しています。
安静時では糖質:脂肪=1:2でエネルギーを産出しており、運動強度が上昇すると共に糖質の利用率が上昇します。
有酸素運動のように長く持続できる運動は、脂肪を利用したエネルギー産生の割合が高いため、長時間運動することができます。
持久力の向上とは、運動強度が向上しても糖質の利用率が大きく上昇しない(=糖質の節約)であることから、脂肪を利用したエネルギー産生が必然的に高まることになります。
つまり、有酸素運動自体にはダイエット効果は高く期待できないが、有酸素運動による持久力アップは脂肪利用効率の上昇から、太りにくい体質へと変化する可能性が大いにあると言えます。
ダイエットの近道は食事の改善
有酸素運動にはダイエット効果が非常に限定的であることが研究で示されています。
この研究は「有酸素運動のみ」に焦点を当てた研究で、食事の改善に関する効果は未測定です。
ただやはり、この研究含め全体から言えるのは、体重管理は「運動+食事」のコントロールが必要不可欠です。
どちらかだけではダメです。
どちらもが合わさって「相乗効果」的に健康的なダイエットが実現します。
食事の管理がいかに大切か。
口にする物が明日の自分を形成します。
ダイエット効果が期待できる食事
最もダイエット効果の出ていた食事は『高タンパク質食』の導入です。
タンパク質は他の主要栄養素と比較し、消化される際に産生される熱量が大きいことで有名です。
そのため高タンパク質食は食べながら燃焼していくことを如実に再現していると言えます。
具体的に、脂肪の少ない
・胸肉
・納豆
・豆腐
・卵
に加えて補足的にプロテインを飲むといった戦略がたてられます。
[関連]できる女性は飲んでいるソイプロテイン
[関連]糖質制限ダイエットなんてまだやってるの?
[関連]高品質なプロテインの選び方【初心者必見】
まとめ:有酸素運動+高タンパク質食でダイエット
有酸素運動だけをしていても痩せないという方は、食事の見直しをしてみましょう。
食事だけで痩せることは可能ですが、決して健康的とは言えません。
有酸素運動+高タンパク質食でどんどん燃焼していきましょう。
今口にしている物は明日の自分を形作ります。
参考文献
・栄養で筋肉を仕上げる!無敵の筋トレ食 岡田隆著
・新しい筋トレと栄養の教科書 岡田隆著
・Thorogood A, Mottillo S, Shimony A, et al. Isolated aerobic exercise and weight loss: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Med. 2011;124(8):747-755. doi:10.1016/j.amjmed.2011.02.037
・Ma C, Avenell A, Bolland M, et al. Effects of weight loss interventions for adults who are obese on mortality, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2017;359:j4849. Published 2017 Nov 14. doi:10.1136/bmj.j4849
・Riaz H, Khan MS, Siddiqi TJ, et al. Association Between Obesity and Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis of Mendelian Randomization Studies. JAMA Netw Open. 2018;1(7):e183788. Published 2018 Nov 2. doi:10.1001/jamanetworkopen.2018.3788
・Johansson K, Neovius M, Hemmingsson E. Effects of anti-obesity drugs, diet, and exercise on weight-loss maintenance after a very-low-calorie diet or low-calorie diet: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2014;99(1):14-23. doi:10.3945/ajcn.113.070052