運動嫌いな大人、子どもは年々増えています。
重ねて、運動不足と感じる人の割合も年々増加傾向にあるとスポーツ庁の調査で明らかになっています。
その根底にある原因の1つは「運動が嫌い」。
運動が嫌いな人は、いくら運動をすすめられても継続することは非常に難しいです。
「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったもので、運動こそ好きでないと自主的に行うなんてことは夢のまた夢なんです。
今回はそんな「運動嫌いから脱却する」ためのコツを紹介します。
記事の信頼性
●【最終学歴】東京大学大学院 (博士)
●【経歴】中学・高校バスケ部トレーナー
●【経歴】甲子園球児ストレングス指導
●【現職】大学教員
目次
運動嫌いを克服するためには競争原理から脱却せよ
運動嫌いから脱却するためには根底の考え方から変える必要があります。
我が国日本は、保育園・幼稚園から小学校、中学校、高校と「運動会」に親しんできました。
また多くの学校で「マラソン大会」が実施され、その順位によって体育の成績がつけられてきました。
このように他者と競わせて(切磋琢磨)、成果をよりよいものとする考え方を「競争原理」といいます。
この考え方はつまり、
デキる人ほど評価され、
デキない人ほど成績が低くつけられます。
こうなってしまうと、運動を好きになる理由がありませんよね?
資本主義の一端であるこの考え方は
貧富の差が拡大するように、
運動に対する考え方も2極化させてしまっていると考えられるのです。
学校体育は「競争」から身体教育を目論む
学校体育の本来の目的は
『生涯にわたって運動に親しむ資質・能力を育てることや体力の向上を図ること』(学習指導要領)
とされていますが、
競争原理が生む弊害については誰も予見できていません。
現場の先生方は、
能力、体力の向上を図ることに精一杯で、
生涯にわたる運動教育まで施せていないのが現状なのです。
実際、大学体育を指導する中でも
多くの学生が運動に対して抵抗感を覚えています。
このように、
運動の得手不得手で成績がつけられてしまう環境で育った子供たちや我々大人は、他人よりも優れた結果を出そうとする心情がこころの奥底に眠っているのです。
つまり、「運動嫌い」の本質は「体育嫌い」とも言い換えることが出来ます。
運動嫌いで損するのはアスリートだけ
「運動嫌い」は我々の生活に影響あるのでしょうか?
実際、多くの「"自称"運動嫌い」な人でも運動習慣がある人はいます。
「運動嫌い=体育嫌い」
であると言い換えることが出来ましたが、
他人に干渉されずに行えるなら人は自ずと動く人が多いのです。
だたしアスリートは別格です。
アスリートは現役生活を終えるまでは常に「競争原理」の中で生きていき、お金を稼がなくてはいけません。
どれだけ努力しても結果が必ず出るわけではなく、
常時他人と比較されることで「運動嫌い」に一時的に陥る人も生じます。
運動は誰のために行うもの?自分の将来のため【運動嫌い克服】
運動は誰のために行うものでしょうか?
こんな問い、愚問でしかありません。
もちろん、自分の将来のためです。
運動をすることのメリットは「筋トレにはメリットしかない【7つの科学的根拠】」にまとめてあります。
加えて紹介すると、
身体活動量を増やすと死亡率は低くなることが科学的根拠として示されています。
このとき重要なのは"運動"ではなく"身体活動"という表現です。
「運動」は身体活動の一部です。
身体活動には「運動」の他、生活活動も含まれます。
すなわち、
身体活動の増加は運動だけするわけではなく、
通勤通学での活動量、
家事での活動量、
これらの増加も重要と言えるわけです。
汗水流して運動するのがベスト!
というよりかは、
「日常からしっかり身体を動かしましょう」
という表現が使われるのはこのせいだといえます。
運動嫌いの克服には短期目標の設定が"不可欠"
運動嫌いを克服するためには「短期の目標」設定が必要不可欠です。
先述したとおり、
競争原理の中で育ってきた我々は
「運動は成果を出さなければならないもの」
「他人より優れた結果を残さねばならない」
というマインドを持っています。
この競争マインドは「運動好きな人」にとっては有利に働きますが、「運動嫌いな人」には明らかに不利です。
そのため、運動嫌いな人は「短期目標の設定」をする必要があります。
運動嫌いな人のための短期目標設定
運藤嫌いを克服するためには目標をとにかく"短期"で立てるのがポイントです。
<悪い例>
・1ヶ月後には5kg減量
・今年の夏は水着を着る
・結婚式までに痩せる
こういった中長期的な目標は、もちろん立てることに否定はしませんが、立てても何ら貢献はありません。
<良い例>
・今日は10,000歩、歩くまで帰らない。
・スクワット10回やるまでお風呂に入らない。
・今週は下りだけは階段使おう。
・ベンチプレス合計1トン挙げるまで終わらない。
この違いは一目瞭然なのですが、
目先に迫る締め切りに対して、実行すべきことが明確です。
このように短期目標(締め切りをすぐそこ)を設定することがまず第一の関門です。
更にその目標が明確且つ実行可能性が高いこと。
欧米でスクワットチャレンジが一時期流行しましたが、
これは理に適っています。
詳しくは「1日10分スクワットを1ヶ月間続けた結果」をご覧ください。
運動嫌いな学生に
「スクワット500回」ね、
といっても続けられるわけがありません。
「初日は50回」
「2日目は60回」
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「30日目は300回」
のようなマイルストーンがある方が人は習慣化するものです。
運動嫌いの克服に"日々のご褒美"は最強
運動嫌いの克服に「短期目標の設定」が重要という話をしました。
加えて、目標達成の暁には"ご褒美"が最強の後ろ盾となります。
ヒトはインセンティブの奴隷
ヒトは本来「インセンティブ」に弱い生き物です。
この性質を上手く使えば「運動嫌い」の克服から「運動の習慣化」まで一気に加速します。
行動経済学者中室牧子慶応義塾大学教授の著書「学力の経済学」にこんな部分があります。
学力を向上させるにはご褒美は必要?
●(A)ある家庭は「次のテストで○○点取ったら10,000円あげるね」とご褒美を教示
●(B)別の家庭では「1日○○ページ勉強したら100円あげるね」と教示
どちらの家庭の子が成績よかったか分かりますよね?
●【正解】日々の学習に対するご褒美を提示した(B)の家庭でした。
このように「ヒトはインセンティブの"奴隷"」と呼ばれるように目先の目標達成に対する評価を欲している生き物です。
つまり、「短期目標の設定」をしたら、達成したときのための「ご褒美」も惜しみなく振る舞うようにしてあげてください。
【関連記事】筋トレ初心者でも周りに差をつける本【東大教授の教え】
まとめ:運動嫌いの克服には【競争原理からの脱却】と【インセンティブ(ご褒美)】
運動嫌いの克服するためには「競争原理からの脱却」を図った上で、短期目標の設定にプラスして「インセンティブ(ご褒美)」を与えるようにしてみてください。
子どもも大人も誰ひとり関係なく、この考え方は適用できる考え方です。
参考文献
・Ekelund U, Tarp J, Steene-Johannessen J, Hansen BH, Jefferis B, Fagerland MW, Whincup P, Diaz KM, Hooker SP, Chernofsky A, Larson MG, Spartano N, Vasan RS, Dohrn IM, Hagströmer M, Edwardson C, Yates T, Shiroma E, Anderssen SA, Lee IM. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. BMJ. 2019 Aug 21;366:l4570. doi: 10.1136/bmj.l4570.
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