「全集中の呼吸」は筋トレにも有効か?【大学の先生が勝手に解釈】

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「全集中の呼吸」は筋トレにも有効か?【大学の先生が"鬼滅の刃"を勝手に解釈】



鬼滅の刃 無限列車編
観て鬼滅の刃にハマりそうです・・・。


さて、鬼滅の刃で活躍する鬼殺隊。
竈門炭次郎や善逸、伊之助、煉獄さん・・・。
彼等が使う「全集中の呼吸」。

「全集中の呼吸」を使うことでバツグンの身体能力を発揮しますが、
これって「漫画の世界だから」でもなさそうですよ。

たしかに5mもジャンプしたり、
電車1両を1秒未満で移動したりは不可能ですが・・・・。

実世界にも『活きそう!』と思ったので
運動が専門の大学の先生が勝手に解釈して勝手に解説します。

記事の信頼性

●【最終学歴】東京大学大学院 (博士)

●【経歴】中学・高校バスケ部トレーナー

●【経歴】甲子園球児ストレングス指導

●【現職】大学教員

●【専門分野】運動生理学・健康科学・疫学







「全集中の呼吸」ってなに?➡【鬼滅の刃】

「全集中の呼吸」は大人気ジャンプ漫画「鬼滅の刃」で出てくる
鬼殺隊が使う呼吸法のこと。

「全集中の呼吸」をすることで能力を飛躍的に上げることができる

「全集中の呼吸」を習得することで更に各流派(水・炎・雷・風など)の型を繰り出すことが出来る。

また

著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法。

当然ながら相応の負荷を使用者に強いるため、基本的には短時間のブーストとして使用する。

全集中の呼吸


超簡単に要約すると、
アニメ(漫画)の世界で使われる呼吸法のことです。




詳しくはこちらをご覧ください。
↓「鬼滅の刃」をアニメで観る↓


↓「鬼滅の刃」漫画全巻↓




筋トレに必要な呼吸と同じ?

「全集中の呼吸」は筋トレにも有効か?【大学の先生が勝手に解釈】

さて、筋トレと「全集中の呼吸」に共通することがあるなんて
こじつけか?と感じるかもしれません。

ただ、よくよく考えてみると
共通項も実は存在します。


腹圧を高めることのメリット

筋トレをする際に「腹圧」を高める為の呼吸があります。

実際には「腹式呼吸」に近く、
横隔膜を腹部に押し下げるように呼吸することで
腹腔内圧を高めることが出来ます。


こうやって腹圧を高めることで
・腰痛の予防
・体幹の安定
を確保することが出来ます。

このような呼吸はスクワットやデッドリフト、ベンチプレスなど
高重量を扱う種目においては必要不可欠な技術です。

※実際に腹圧を高める為にトレーニングベルトなどを使うことが推奨されているほどです。詳しくは筋トレ用ベルトはなぜ必要?【初心者こそ必携】をご覧ください。


筋トレだけじゃない!「腹圧」が重要な局面

腹圧」に関して話を掘り下げると
実は重要な局面は何も筋トレだけではありません


腹圧を高めることで
ジャンプ動作に必要な「股関節伸展筋=臀筋」の筋力が高まることが
実際の研究で明らかとなっています。

このメカニズムは非常に難しいですが、
呼吸法によって腹圧の高め方がおよそ確立されてきている中、
実際にパフォーマンスにも応用されており、
「腹圧」と「筋力発揮(=パフォーマンス)」に因果関係が説明されるようになりました。



「全集中の呼吸」=腹圧を高める?

話は鬼滅の刃に戻しますが、
「全集中の呼吸」は"ブースト"的な効果を発揮します。

スピードが向上したり
打撃力が向上したり。

もし「全集中の呼吸」が腹圧を高めることに関連しているならば、
腹圧=運動パフォーマンスを一時的に向上させることができるということになりますよね?

先に紹介した研究含め、
腹圧と身体の加速度には密接な関係(正の相関)があると言われています。

ということは、
意図的に腹圧を高めること(全集中の呼吸)は
爆発的なパフォーマンスを発揮することが可能!と考えることが出来るわけです。



腹圧ってなに?

腹圧は横隔膜骨盤低筋群の間の空間(=腹腔)の内圧のことです。

いわゆる「体幹部」といわれる場所で
下半身、上半身のつなぎ目に大きく位置します。


この腹圧を高めると言うことをイメージするには
・タイヤ
・ペットボトル
・ボール
・風船
などを想像してみてください。

空気の抜けたタイヤなどは反発性をほとんど持ちませんが、
空気をパンパンに詰めると・・・・?

タイヤは硬くなり、
ペットボトルは凶器と化し、
ボールは跳ねますよね?

30秒〜が腹腔の説明です。





腹腔も同じです。
(※実際に呼吸で空気を中に詰めるわけではありません)
横隔膜を押し下げることがまるで
風船が膨らむように内部の圧が高まります。

この圧を一般的に「腹圧」と呼んでいます。



腹圧を高めるといいことは?

腹圧を高めるメリットは
先ほども研究を紹介しましたが"パフォーマンス"が向上します。

なぜそれが起こりうるか。

それは腹圧(腹腔)が位置する場所がヒントとなります。

腹腔は上半身と下半身のほぼつなぎ目にあると言いましたが、
このつなぎ目がパンパンに空気の入っている状態、
つまり腹圧が高い状態であると、
・下半身で産みだした力が上半身に伝わりやすく
・上半身で産み出すリズムが下半身に伝わりやすい
なります。

ペットボトルがいい例ですが、
中に空気や液体がパンパンに入っている方が
キャップの開け閉めはスムーズですし、
上から落とした時に跳ねますよね?


「腹圧を高める」という行為は
意図的にそのような状態(上半身と下半身の連動)を作り出しているということです。





「全集中の呼吸」=腹圧を高める、と置き換える【腹圧を高める呼吸法】

「全集中の呼吸」は筋トレにも有効か?【大学の先生が勝手に解釈】

「全集中の呼吸(=腹圧を高める)」を実際に行ってみましょう。

高い競技レベルでプレイする人は
必ず出来る(もしくは習得した)呼吸法です。

そしてこれから上の世界で活躍したい人は
必ずできる様にした方がいい呼吸法です!


ドローイン

ドローインは腹圧を高める呼吸法では最も一般的な技術です。

腹筋部を背骨に押しつけるようなイメージで行う呼吸方法です。

わかりやすい動画があったのでご参照ください。




ただし、このドローインは
日常生活動作を限りなく離れた呼吸法なので
「全集中の呼吸」とは言えません


ということは、
この呼吸で腹圧を高めたとしても
プレーにはなんのいい影響も与えないことが予想されます。
(セルフケアとして使うには◎)



ブレーシング

ブレーシングはドローインと違い
横隔膜から体幹部のほぼ全ての筋肉を同時収縮させて
腹圧を高める呼吸法
です。

一般的に「息を吐ききった状態」の腹部は
全方位の体幹筋が収縮され、腹圧が高まり
パンパンのペットボトルのような硬さになります。

ブレーシングを扱った研究では
実際に筋力の向上効果があると報告されています。


ただこのブレーシング、
ドローインと比べ圧倒的な知名度に差があり、
トレーナーでさえも出来ない人が多くいるという状況です。

この動画が「ドローインとブレーシングの違い」についてわかりやすくまとめられているのでご覧ください。





こちらは為末大選手。
為末選手が行っている方法は紛れもなく「ブレーシング」です。






ブレーシングは「呼吸法」とはいいながら
会話しながらできる様にして行くことで
実際の競技動作に近づけていきます。

すなわち、
ブレーシングは実際のプレーにおいて
最も有効活用できる「全集中の呼吸」
であると言い換えることが出来ます。




まとめ

鬼滅の刃「全集中の呼吸」と筋トレ。

全くの異世界かと思いきや、
深く考察すると似通う部分もあります。

「全集中の呼吸」を「腹圧」さらには「ブレーシング」と置き換えることで、
鬼殺隊の剣士達が一時的なブーストで活躍することも
納得
できてしまいます。


ただし、
「全集中の呼吸 常中」は実際にどうなのかは分かりません。
そして、
「全集中の呼吸」で止血する場面がありますが、
腹圧を高めても止血にはならないはずなので
過信しすぎてもダメですね。


あくまでも
一時的な身体能力の飛躍的向上が目的なら「全集中の呼吸(=ブレーシング)」でオッケーです!





参考文献





Tayashiki K, Kanehisa H, Miyamoto N. Does Intra-abdominal Pressure Have a Causal Effect on Muscle Strength of Hip and Knee Joints? J Strength Cond Res. 2018 Jun 25. doi: 10.1519/JSC.0000000000002649. Epub ahead of print. PMID: 29952867.


de Gennaro JD, de Gennaro CK, Shaw JM, Petelenz TJ, Nygaard IE, Hitchcock RW. The Relationship Between Intra-Abdominal Pressure and Body Acceleration During Exercise. Female Pelvic Med Reconstr Surg. 2019 May/Jun;25(3):231-237. doi: 10.1097/SPV.0000000000000523. PMID: 29135811; PMCID: PMC5949233.


Tayashiki K, Maeo S, Usui S, Miyamoto N, Kanehisa H. Effect of abdominal bracing training on strength and power of trunk and lower limb muscles. Eur J Appl Physiol. 2016 Sep;116(9):1703-13. doi: 10.1007/s00421-016-3424-9. Epub 2016 Jul 5. PMID: 27377782.

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